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十ニ日目。 トンッ。 目の前に置かれた夕食を見て、私は夕食を置いた張本人を見る事なく溜め息を吐きました。 中華スープとれんげが置かれた時点でもう分かり切っているもの……。 「……………」 「……………」 「め…村上さん」 「何でしょうか? 千聖お嬢様」 「今日はどちらの名産品なの?」 「今日は『千葉のチャーハン』です。お下げしますか?」 「……いいえ、食べるわ。味付けに使用した調味料はご存知?」 「塩、胡椒、コンソメ、あとは……。これは言わないでもいいでしょうか」 「何かしら? 気になるわ」 「あとは~愛情をた~~っぷり入れたんですよ~♪ ……だそうです」 め…村上さんの対応を軽く流しながら私は『千葉のチャーハン』を頂く事にしました。 何だか寒気がするのは気のせいかしら? (何故かしら? 一瞬、出来ないフライパン返しを懸命にする桃子さんの顔が浮かんだ様な気が……) ル* ’ー’リ<違うんです~♪ 本当は出来るんですよ~♪ 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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カチ カチ カチ カチ カチ カチ…… 草木も眠る丑三つ時。私はまだ眠れずにいた。 薄明かりの中で作成されていく文章。えっ? 内容? 読む勇気、本当にある? カチ カチ カチ カチ カチ カチ…… 一文字、一文字、怨…じゃなくて思いを込めて。 実は休み時間中もルーズリーフに書いてたんだけど(授業中は絶対しない)、 やっぱりメール作成の方が落ち着くみたい。 カチ カチ カチ カチ カチ カチ…… 下書き保存をして携帯を閉じる。きっと明日もこの時間に打ち込んでるんだろうな。 自嘲気味に笑うと少し悲しくなった。 ノソ+▼o▼)<闇mailの保全ケロ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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ニ日目。 トンッ。 目の前に置かれた夕食を見て、私は思わず夕食を置いた張本人を凝視してしまいました。 中華スープとれんげが置かれた時点で分かっているつもりだったのだけれども……。 「め…村上さん」 「何でしょうか? 千聖お嬢様」 「昨日の夕食も“チャーハン”だったのだけど今日もなのかしら?」 「ええ。名産品ですので」 「一応お聞きするわ。今日はどちらの名産品なの?」 「今日は『埼玉のチャーハン』です」 「埼玉県ってチャーハンで有名だったかしら?」 「私はその様に伺っていますがお下げしますか?」 「いいえ、食べるわ。ちなみに何チャーハンとかあるのかしら?」 「葱をふんだんに使用した葱チャーハンです」 め…村上さんの対応に戸惑いつつも私は『埼玉のチャーハン』を口に運びました。 少し塩辛い気がするのだけど料理人さんの好みなのかしら? (何故かしら? 一瞬、汗だくの舞美さんの顔が浮かんだ様な気が……) 从*▼ゥ▼从<ガーッと流し込んで食べても美味しいよ。とか言ってw 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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えりかさんから「ちょっとお嬢様にお話しがあります」と声をかけていただいたので、 夕飯の後にお部屋に来ていただくことにした。 最近は悩んでいらっしゃるのか、深刻な顔をされていることが多かったから それについてのお話しかもしれない。いつも相談をしている方の私にアドヴァイスが できるかわからないけど、わざわざ私に声をかけてくださったのだから しっかり聞いて差し上げないと。 ドアをノックする音に続いてえりかさんが入ってきた。 表情を見ると意外にすっきりした顔つきだったので悪いお話しではないかもしれない、 と少し安心した。 「それでえりかさん、どんなお話しなのかしら」 「最近将来のことを考える機会が多くてね、うちなりにやりたいことがはっきりしたから まずお嬢様にお知らせしておこうと思って」 「えりかさんも高3ですものね、それで卒業後はどうなさるの?」 「卒業後とは少し違うんだけどー」 「どういうことかしら」 「うちさー、ファッション関係の仕事に興味があって、そのことでね、 ちょっといいチャンスに恵まれたから秋から転校することにしたんだ。 卒業まで後わずかだけど、今すぐ決めないとこのチャンスは生かせないみたいだから 思い切って転校することにした。お嬢様とお別れするのは寂しいけど 転校してからも会う機会はあるだろうし・・・」 「えりかさん、何をおっしゃっているの? 転校ですって? 冗談でしょう?」 突然のことに頭がついていかず、えりかさんのお話しを遮ってしまう。 動揺している私とは対照的にえりかさんはしっかりした表情でお話しを続けられた。 「冗談じゃないよ、うちこれでも真剣に考えたんだ。秋には転校して目標に向かって 頑張ってみるよ」 「そんなえりかさん私のことがお嫌いになったの?」 「お嬢様違うよ、そうじゃないよ。お嬢様のことをうちが好きなのはこれまでも これからも変わらないよ。ただうちの目標をかなえるのに、ちょうどいい機会があって・・・」 「待ってちょうだい、えりかさんお待ちになって。 ご冗談でしょう? でも嘘なんだよっておっしゃるんでしょう?」 「さっきも言ったけど本気の話だよ。嘘なんかじゃないんだよ」 そんな・・・。 えりかさんが卒業よりも半年も前にここからいなくなるなんて考えられない。 私はまた同じことを口にしていた。 「でも嘘なんだよって続けるんでしょう?」 「嘘なんかじゃないよ」 「お願い、でも嘘なんだよっておっしゃって! だってそうじゃなかったら本当のお話しになってしまう!」 「だから本当の話なんだよ」 そんな・・・。私の頭は真っ白になった。 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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十日目。 トンッ。 目の前に置かれた夕食を見て、私は夕食を置いた張本人を見る事なく溜め息を吐きました。 中華スープとれんげが置かれた時点でもう分かり切っているもの……。 「……………」 「……………」 「め…村上さん」 「何でしょうか? 千聖お嬢様」 「今日はどちらの名産品なの?」 「今日は『東京のチャーハン』です。お下げしますか?」 「……いいえ、食べるわ。味付けに使用した調味料はご存知?」 「塩、胡椒、コンソメ、あとは……。これは言わないでもいいでしょうか」 「何かしら? 気になるわ」 「愛情……と伺いました」 め…村上さんの対応を軽く流しながら私は『東京のチャーハン』を頂く事にしました。 愛情でも母親から愛情の様な気がするのは気のせいかしら。 (何故かしら? 一瞬、割烹着姿の須藤さんの顔が浮かんだ様な気が……) 从o゚ー゚从<じゃ、お嬢様。食べようか 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「「……………」」 あまりの事に二人とも言葉が出なかった。それほどまでに強烈過ぎた。 と同時に身近にいるのは理想像なんだと思った。 「みや」 「ちぃ」 「……お金持ちって分からないね」 「……何人の生徒が現実を見るだろうね」 釘を刺されていたけれどネタを探してしまうのは記事を書く者の性でしょう。 と興味を抑えられずに近付いたのが運の尽きだった。 「ねぇ、部長は?」 「何か察知して帰ったみたい。記者の勘ってやつじゃない?」 私達はまだまだということか。 何度説明しても自分の記事を書いてほしいと駄々をこねる人を尻目に溜息を吐いた。 それにしても…… ノノl;∂_∂ ル<部長と口喧嘩したらどっちが勝つかなぁ? 从;´∇`从<話が噛み合わなくて喧嘩にならないと思うもんに~保全 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 「なーんーで梨沙子がこんなとこにいるんだよっ」 アイドルモードを一時停止させた、少々ドスの効いた声のももちゃんが、ずんずんと大また歩きでこっちに迫ってくる。 ステージではぶりぶりっこで、顔立ちの幼さを最大限に駆使したパフォーマンスを繰り広げているというのに、アイドルの舞台裏ってこえええ・・・。 薄桃色の可愛らしい衣装とのギャップも相まって、なかなかにホラーな光景だ。 「ここ、関係者専用口じゃないんでしょ?だったら、私がどこにいたって別にいいじゃーん。関係ないじゃーん」 だけど、りーちゃんは全然ビビッていない。さすがもぉ軍団。 むしろ、「ももふぜいがあたしに注意とかwww」みたいなテンションで、ますますももちゃんのほっぺたが紅潮していく。 「ももちゃん・・・ステージは?」 「ん?大丈夫。今アンコール前の休憩中だからね」 おざなりながらも、一応質問に答えてくれるももちゃん。だけど、その視線はガッチリりーちゃんにロックオンされたままで・・・ 「前半、最前で楽しそうにしてたくせに。何で急にいなくなるの?もぉのステージング、ダメだった?」 「そんなことはないわ。今日のももちゃんのパフォーマンス、とても素晴らしいと思うわ。千聖はしっかり見ていたもの。でも、すぎゃさんは夏焼のファンでいらっしゃるから、その、ももちゃんのことは・・・」 「そうそう、もともと別に梨沙子もものことは大して見てなかっただろうし、気にすることないって!はいドンマイ!」 「・・・貴様ら」 ・・・うわ、出た熊井ちゃん。これはうっとうしい事になりそうだ。 千聖も熊井さんも、天然で人を凹ませる天才なもんだから、ももちゃんもがっくしと肩を落としてしまった。 「あれー?もしかして梨沙子に見て欲しかったのに、居ないから怒っちゃったのー?あはは、でもでも、どーせ梨沙子はさぁ」 「・・・熊井ちゃん、その辺で勘弁してあげなさいって」 須藤さんの制止は一歩遅かったようだ。 ももちゃんはすっかりいじけてしまって、マンガのようにうずくまって床にイジイジと文字を書いて撃沈している。 「・・・ふんっ、どーせもぉの頑張ってる姿なんて、どーでもいいんだろうけどっ!でもねもぉだって一生懸命やってんのにさ、団員が見てないとかどーゆー仕打ちなの?これ」 ・・・あ、ちょっと可愛い。 ぶりぶりももちゃんじゃない状態を知っているからこそ、こういう素の状態で子供っぽくなっている姿は新鮮だと思う。 「もも、大丈夫!ウチはちゃんと見てたよ、ももがオープニングの曲でワンテンポ遅れたとことか、その次の次の曲の大サビで声裏返っちゃったのもわかったし」 「ムキー!!」 大爆発を起こすも、熊井ちゃんはニヘニヘと笑って流しちゃうもんだから、全然怖い雰囲気にならない。ちょっと面白くなってきてしまったのか、千聖なんてうつむいてぷるぷると肩を震わせている。 「もも・・・ごめんね」 すると、りーちゃんが両手でももちゃんの手を取った。 「私、夏焼先輩が大好きだから、やっぱりどうしても夏焼先輩の方ばっか見ちゃうのね。 でも、ももが頑張ってるのもちゃんと見えてたよ?(微妙に) 歌声も、可愛くてすっごく響いてた!(気がする) MCも、さすがももって感じで、面白かったし!(多分) だから、全然見てないなんてことはないから。ね?」 ――こ、こ、こ、この女・・・結構やりやがるな・・・! ℃変態とともに「サトリ」呼ばわりされちゃうぐらい、人の気持ちをエスパーできちゃう私には、長い睫毛をはためかせて可愛く甘えるりーちゃんの、言外にある本音がとってもよく伝わってくるのだった。 「・・そーお?まあ、見てたならいいけどぉ」 「いいのかよ」 ・・・本当、来年はトリオ漫才でもやったほうがいいんじゃないの、もぉ軍団。 「・・・ま、でもね。何となくわかってるから。梨沙子がどうしてここにいるのか。みやのことでしょ」 ふと、ももちゃんが真顔になる。 「みやが今日、気合い入ってるのが気になって、探り入れにきた感じ?」 「ももぉ」 「さすがみやのガチファンだね。・・・まあ、ちょっと開演寸前にいろいろあってさ。長年の心のつかえがいきなり取れたもんだから、みやも上手く心の制御が出来なくなってるの」 「いろいろって?夏焼先輩の心に引っかかってたのって?」 りーちゃんは必死に詰め寄るけれど、ももちゃんは涼しい顔でそれを受け流す。 「それはみやにしかわからないことだからね。ウフフ でも梨沙子、考えてごらん。逆に、こんな浮かれたみやを見られるのは今年だけかもしれないんだよ」 「今年だけ・・・」 「そう。梨沙子は超レアな状況に遭遇してるっていうのに、こんなとこにいていいの?もったいなくない?」 ・・・なるほど、うまいな。 ももちゃんからの説得を受けて、りーちゃんは「そうだよね」とつぶやき、いきなり立ち上がった。 「そう、そうだ!あたし、何血迷ってたんだろ。 今年の夏焼先輩には、今年しか会えないっていうのに!」 「そうだよ梨沙子!」 「こうしている間にも、夏焼先輩の体内では新たな細胞が分裂や収縮を繰り返しているわけで」 「う・・・うん」 「1秒先の夏焼先輩は、1秒前の夏焼先輩とは違うんだもんねっ。なんてもったいないこと!こうなったら、アンコールは最前でオペラグラス使うから。皮膚の質感から頭皮の水分バランスまで徹底的に目に焼き付けるもん!」 ――先日、栞菜が読んでた高校生向けのファッション雑誌に、こんなことが書いてあった。 “何かに夢中になってる女の子って、とっても素敵!ひたむきでポジティブな恋するオーラが恋愛運を(ry” 「どこが素敵やねん」 引きつった顔の須藤さんと目が合う。ももちゃんも失笑気味。熊井ちゃんに至っては飽きてウトウトしだしているこの状況の中、なぜかキラキラした瞳でりーちゃんに駆け寄る子犬、1匹。 「すぎゃさんっ」 「おう!」 お得意のちょっとむかつく(キリッ)顔で、千聖は声高に語りだす。 「すぎゃさんの雅さんへの愛情、とても深く胸にしみこんだわ」 「おう!」 「さあ、今度はその暖かなお気持ちを、観覧席から雅さんへ届けましょう!お名前を呼びながら、席へ戻るのよ!すぎゃさんっ」 「おう!」 「ちょ、おま」 「みーやび!オイッ!みーやび!オイッ!」 「みーやび!オィッ!みーやび!オイッ!」 「「みーやび!オイッ!みーやび!オイッ!」」 「呼んだ?」 「ひぎぃ!」 コント番組のように、りーちゃんが横っ飛びで床に崩れ落ちる。 ――アカン、もうグダグダやでぇ・・・ 視界の隅っこで、須藤さんが天を仰いだ。 次へ TOP
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前へ “昼休みは学食の席を取っておいてね” 大学に入っても僕は席取り係の役を当たり前のように続けさせられている。 熊井ちゃんに促されて学食の席取りに向うため教室を出ようとしたとき、クラスの女子からクスクス笑われてることに気付いたんだ。 なんか彼女たち、手に持ってるスマホの画面を指差しあいながら笑ってる・・・ また何かネットに転がってた面白画像でも見つけたりしたんだろうけど、僕を見て笑ってるのは何故だろう。まったく・・何だって言うんだ。 なにか今日は心が乱されることばかりが続く・・・・ 今日はそういう日なのだろうか。 ってことは、ひょっとしたらこのあともまだ・・・ 学食に着き、いつもと同じ場所の窓際のテーブルを確保(ここじゃないと自称リーダーの機嫌が悪くなるよ)。 無事に席を確保できたことでホッと一息つく。ようやく落ち着くことができた思いだ。 熊井ちゃんが来るまでの少しのあいだリラックスさせてもらおう。 そうやって一人で物思いにふけりながらボーッとしていると、僕が陣取っているテーブルの対面の席、その椅子を引いて座ってきた人がいた。 えっ? いくら混んでるとはいえ、一言の断りも無しに相席する気かよ。おいおい・・・ もぉ軍団のショバに座ろうだなんて、いい度胸してるな・・・ ここのしきたりってものを知らない新参か? でも、それを許したりしたら自称リーダーから僕が叱責されることになってしまうだろ。おいちょっとあなた! 目の前に座った人。 それは思いがけない人だった。 「よっ、少年!」 「も、桃子さん!?」 「ウフッ。来ちゃった♪」 軍団長、降臨。 (なるほど、確かに今日は心が乱されることが続く一日のようだと今あらためて痛切に実感・・・) 濃淡ピンクのチェック柄もまばゆいその格好。トレードマークの、その特異な二つ縛りの黒髪。 どちらかというと地味目なこの大学の学生の中で、明らかに異色と言うか浮きまくりの桃子さん。うん、さすがです。 そんな桃子さんが、僕に対してとっても楽しそうな視線を向けてくる。そう、いつものようにね。 この人のことだ。僕が大学生になってもおもちゃ扱いは変わらないってことなんだろう。いいんですけどね、別に・・・ 「ウフフフ。大学生になっても席取りの任務は変わらないんだ。得意中の得意技だもんね、席取りw」 「・・・それぐらいしか取り得もないですから、僕は。。。」 「あれ? なに?暗いじゃない。昨日はあんなに楽しんでたみたいだったのに」 「いえ、ちょっと・・・ ってか、桃子さんどうしてうちの大学に? それに、よくここが分かりましたね」 「もぉ軍団の部室が出来たって聞いたから遊びに来たの。この時間なら学食の席取りしてるはずだからって、くまいちょーから聞いてたからね。すぐ分かったよw」 僕らの大学にやってきた軍団長。 今日は部室の視察という名目で遊びにきたらしい。 遊びに来たって・・・ ひょっとしてこの人結構ヒマなのかな。 でも、桃子さんが来てくれたこと、僕は嬉しかったんだ。 いつも明るい桃子さん。その姿はいつだって見る人の気分をも明るくしてくれる。 今も、現れた桃子さんの姿を見て、落ち込みきっていた気持ちがちょっと上向いた。 それに、昨日は心残りがあったんだ。遅れて行ったそのライブが終わったあとも軍団長とは話すことが出来なかったんだから。 だから、僕はいま桃子さんと会えたことが結構嬉しかった。 「そうですか! それでうちの大学に!」 「うん。でもそれよりさ、お昼ごはんにしようよ。くまいちょーは来れないみたいだけど」 「えっ?来れないって・・・ ついさっき、席取りしておくように言ってたくせに。何をしてるんだろ。聞いてますか?」 「さっきメールしたら今ちょっと忙しいから先に食べてて!だって。で、後で部室で会おうね、ってそれだけ言ってたんだけど」 「そんな急に忙しくなったって、熊井ちゃん、何をし始めたんでしょう・・・・?」 「さあ? でもきっと楽しいことじゃない?ウフフフ」 桃子さんにとっては楽しいことでも、それが僕にとっても楽しいことだとは限らないわけで。 ------------- その頃、教室ではクラスメート全員を前に壇上から楽しそうに長説明を始めた熊井ちゃん。 川*^∇^)||<どうしてあいつが暗くなっているのか、説明しましょう!!(ドヤ顔) 川*^∇^)||<あいつがどうして暗くなってるのかというとー、どうせまた舞ちゃんが振り向いてくれなかったとか言っていじけてるだけでーw なんか暗くなってたけど、まぁいつものことだから何も心配しなくていいからねー! あまり構うと付け上がるから決して甘やかしたりしちゃダメだよ。 でー、舞ちゃんっていうのはー、あいつがもう何年もカタオモイの学園生の子です! 初めて見たときに一目惚れしちゃったんだけど、そのときの舞ちゃんはまだ中学2年生! あいつ、いくら若い女の子が好きだからって、ちゅ、中学生wプフォ それ以来、舞ちゃんにずっと付きまとっててー、勢い余って無謀にも告白したんだけどもちろん見事に玉砕しちゃったのねw キッパリと振られたのにそれでもあきらめきれなくて、今でも舞ちゃんのこと追い掛け回してるの。凄い粘着だよねー。 で、今朝もいつものように登校する舞ちゃんを待ち伏せしてたんだろうけど、案の定まったく相手にしてもらえなかったんだよきっと。 それであんなに暗くなっちゃったってわけw ハイ、このプロジェクターに注目! 舞ちゃんっていうのはこの子です!! http //chisamai.jp/img/cm_09318.jpg (おぉっ!!) あれ?間違えたw こっち!!この子が舞ちゃんです!! http //chisamai.jp/img/cm_09197.jpg (「こりゃ無理だろw」「身の程知らず過ぎるww」という声が教室中からあがる) ----------- カフェテリア方式の学食。プレートを持って列に並ぶ。 混雑しているこの時間。いつもの光景の中に、今はそこに桃子さんが並んでいる。すごい違和感だ。 実にシュールな光景だが、周りの人は見て見ぬ振りをしてスルーしている様子。これ、熊井ちゃんを見たときの周りの反応と全く同じだ。 さすがもぉ軍団の偉い人たち。まとっているオーラがケタ違いだよ・・・ 「立派な学食だねー。この建物ぜんぶ学食なんでしょ」 「まぁ、学食しか食べるところもないですから。ご覧の通りキャンパスは山の中ですからね」 「へー、メニューも豊富なんだね。少年、何にする?」 「そうですね、僕はからあげ定食にしようかな」 「じゃあ、もぉはこの超熟成牛ステーキカレーってのにするね、ごちそう様♪」 「・・・・僕がおごるんですか?」 「当たり前じゃない。ウフッ♥」 いつから当たり前になったんだろう。 もぉ軍団に関するカネの流れに関しては一度追求しようと思いつつもう何年も経っている気がする。 僕がバイトしてもバイトしても、その度に何か一方的に吸い上げられてるように感じること、それだって気のせいではないよね。 まぁそのあたり、指摘するのは何かアンタッチャブルなことに触れるようで、そんな勇気は僕にはとても無いんだけど。 もしそんなことしたら、あの大きな熊さんの逆鱗にでも触れて消さr・・・・ そういえば先日の誕生パーティーの店代のことだって、ちょっと納得いかないんですよね。 なんで開催にかかった経費を僕が一人で丸かぶりするのか。おかしいでしょ。 そのときのライブUSBとDVDであんなに儲けてるんだ(熊井ちゃんからその額を聞いて僕は腰を抜かした)。 だったら、儲けてる某事務所社員さん、あの店代ぐらいその莫大な売り上げの中から払ってくれてm・・・ 僕にはいろいろと腑に落ちない点があるが、その辺のことにあまり頭を突っ込むことはしない方がいいのかも。 何かアンタッチャブルなことに触れるようで(以下同文 あぁ、そのライブDVDの件も疑問なのだ。 熊井ちゃんは一人ホクホク顔で高笑いしていたけれど、あの映像の著作権(?)というものはBuono!の皆さんにあるんじゃないのか? DVD販売における収益の分配というかその辺のやりとりはどうなってるんだろう・・・ でもまぁ、それは僕が考えることじゃない。もぉ軍団とBuono!の皆さんの間の問題だ。僕には関係の無いこと。 だが、いま目の前にいる笑顔の桃子さんを見ていると、そのことが僕はとても心配になるのだ。 本当に僕は無関係でいられるのだろうか・・・ 熊井ちゃん!お願いだから、雅さんや愛理ちゃんには絶対に迷惑をかけないでね。そして桃子さんにも(←今はここを特に)! 「さあ食べよー!」 おいしそうに食べる桃子さん。見るからに美味しそうなステーキを一口食べては目を細めたりして。 その姿に、カワイイ・・なんてちょっと思ったが、そんなこと思ったこと僕は決しておくびにも出さない。 一方からあげに箸をつけた僕へ、軍団長が声を掛けてくる。 それは予想外の言葉だった。 「梨沙子の誕生パーティーはいろいろとお疲れさま」 軍団長の口から出たその信じられない単語に、僕は箸を持ったまま思わず固まってしまった。 「ア、アリガトウゴザイマス・・」 「梨沙子、喜んでたよー、すっごく」 「それは良かったです。桃子さんの企画、大成功だったんですね。さすが軍団長」 「それにしても、突然みやが現れたときの梨沙子のキモさったら(ry」 「いい企画でしたよね。・・・そうだ!こうやって梨沙子ちゃんの誕生パーティーも成功したことだし、あの!来週は愛理ちゃんの誕生日だし、その日も誕生パーティーしましょうよ」 「却下」 ぐんだんちょー即答。 直前からの一転してその不機嫌そうな表情。 「もぉのときはやんなかったくせにさぁ」 くちびるを尖らす桃子さん。 あ、これまたちょっとカワイイ・・・・ しかし、桃子さんの誕生日には何もしなかったこと、まだ根に持ってるのか。 だって、ちょうどその時期は毎年忙しいからどうしても忘れてしまu いやいや、そうじゃなくて僕は今年は受験もあったわけですし、しょうがなかったんですよ。 受験が終わったらもう授業も無いからそれからはずっとバイトに精を出してたし。 それに、そういうことは僕にじゃなくて、発言権のある軍団の上の方の人に言ってほしいんですよね。 「それにしても、さすがのライブでしたね。さすがBuono!の皆さん。梨沙子ちゃんも楽しんでたみたいで」 「梨沙子ねw あの子、みやのコールとか声デカすぎだからw まぁいつものことだけど、あの美声を惜しげもなく使ってさーw で、少年はどうだったの?楽しめた?」 「はい! 最後の初恋サイダーしか僕は見れなかったんですけど、感動しました!!」 「少年がピンクのサイリウム振ってくれてたから嬉しかったよ。でも、少年、推し変したの?」 いや、あれは緑サイを忘れたから、たまたまそこに誰も手をつけずに放置されてたピンクサイをこれでいいかとしょうがなく・・・ 「いえ、推し変とかそういうわけじゃないですけど、軍団長を応援するのは出来る団員の僕としては当然の行為(震え声)」 「そっか。もぉの魅力に、ついに少年もピンクサイを持つようになったんだね。分かるよ、その気持ち♥」 ニッコニコ顔の桃子さん。とても楽しそう。 「もぉのファンがまた一人増えちゃったか~。もぉがかわいすぎて、ゆるしてにゃん♪」 いや、だから、それ違u 「ピンク色のTシャツ、少年にも似合うと思うよ。次のライブでは是非着てきてね」 「いや、あのイラスト入りのピンク色のTシャツ、どこで売ってるのかも知らないですから」 あの独特のTシャツを着こなせるようになる為には、越えなければならない一線があるような気がする。 そして、僕はまだそこまでの覚悟というものを持ち得ていない。 「さて、そろそろ行こうか」 「えっ? 行くってどこにですか?」 「部室へだよ、我がもぉ軍団の。それにしても、くまいちょーすごいじゃない! もう学内に部室を確保しちゃったなんて」 「確保っていうか、強奪といった方が適切な行為でしたけどね」 「あはははw やっぱりそうなんだw」 「すごいですよ、熊井ちゃんの行動力は。どこからあのパワーが出てきてるんですかね。こうと決めたら猪突猛進で」 「くまいちょーは気が早いからねー。少年ものんびりとしてちゃダメでしょ。ほら、今だってそう。さっさと行動する!」 「ひとりで食事できるときぐらいのんびりとさせてくださいよ。ただでさえ引っ張りまわされてるんだから」 「なに言ってンの。さぁ早く行くよっ」 僕の言ったことはまともに聞き入れてはくれないという、もぉ軍団の人特有の僕に対するその対応。 ましてやこの人は軍団長なのだ。 若干あきらめが入った表情になっていたかもしれない僕に、桃子さんが殊更にこやかに告げる。 「じゃあ、少年に案内してもらおっかな」 次へ TOP
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前へ ホームルームのあと、今日は進路指導があった。 あらかじめ届け出ている志望をもとに、進路の方向性を具体的にある程度絞り込んでいくのだ。 もうそんな時期に来ているんだな。 進路指導を行うという今日の二者面談。 他の生徒の面談は順調に進んでいたようなのに、僕の面談だけは何故か異様に長かった。 長い進路指導の時間を終えると、僕は生徒会室へと向かった。 今日は生徒会の仕事があるのだ。 生徒会室のドアを開けると、そこには小春ちゃんがいた。 「進路指導、いま終わったの? 遅かったねー」 「うん。なんか、たっぷり説教されちゃったよ・・・」 「説教って、進路指導じゃなかったの? そんなに成績悪かったんだ」 まぁ、確かに僕はそっち方面でも先生から説教受けそうだけど、いま受けてきた説教はその事では無い。 「進路指導のはずだったのに、その前にお前には生活態度のことで聞きたいことがたくさんあるとか言われて」 「そうなんだー。それは長くなるはずだね」 小春ちゃんの顔が、わくわくとした楽しげな感じに変わってきた。 「最近遅刻はやたら多いし、生活がたるんでる証拠だって言われた。 応援団の上級生からも目を付けられてるようだし、あろうことか警察から電話はかかってくるし、どうなってるんだって。 まずそういう態度を改めて、学生の本分とは何かを真面目に考えろって言われた」 なんで、この僕がそんなことを言われるようになってしまったのだろう。 僕は、どっちかというと入学以来ずっと真面目な方のキャラクターだったはずだ。 先生の手を煩わせたりすることなど殆ど無い、ごくごく普通の善良な一般生徒だったはず。 そんな僕が、どうして生活態度を改めろなどと言われるようなことになっているのだろう。 生活態度が悪いなんて、去年の面談では一回も言われたことなんか無かったのに。 「1年の頃はこんなこと無かっただろ。何かあったのか?」 とか、先生から真顔で聞かれる始末。 心当たりは、あります。 ありますけど、言ってもしょうがないことは言ってもしょうがないことだ。 運命だと思って、あきらめて受け入れるしかないんだ。 「そんなこと言われたんだー。あははははは」 「笑い事じゃないよ、小春ちゃん」 「だってさー、面白すぎだよw 小説でも読んでるみたい。ある時期を境に謎のキャラ替え。あははは」 「キャラ替えって・・・僕はいつだって変わらず僕のままなのに」 「でもさ、先生からそんなこと言われるなんて、そんなのむしろ光栄でしょ? うちの学校はやったもん勝ちの校風なんだから」 「まぁ、そうなんだけど、言われるにしても内容が何と言うか僕的に不本意っていうか・・・」 「大体なんで僕は、こんなに校内のいろいろな人から目を付けられてるんだろう」 「いろいろな人って?」 「まず先生でしょ。それから応援団の人たち」 「応援団の人たちとも関わってるんだ」 「関わってるというか、マークされてるみたいなんだ。あの日以来ね」 そう、あの日。 熊井ちゃんがこの学校に乗り込んで来たあの日から、この学校での僕の立ち位置が変化したのだ。 「あの人たち礼儀作法にうるさくって。会ったら直立不動で挨拶しなきゃならないんだよ。 何で一般生徒の僕にまで・・・今までは全然関係無かったのに」 「あとは、親衛隊の人たち・・・」 「親衛隊?」 うん、そうだよ。小春ちゃん・・・ 「小春ちゃん、あの人たち、なんとかならないんですかね」 「なんとかって?」 「なんか、あの人たちからずっと見張られてる感じがするんだよね。怖くてしょうがないんだけど」 「会うと露骨に睨んでくる奴もいるし。でも、睨みつけてくるだけで直接は絡んできたりしないんだけどね」 久住小春親衛隊の連中、僕のことを恐れているんだな。 まぁ、硬派で知られるこの僕には、さすがの久住小春親衛隊の連中も手を出せないってことだ。 「ま、親衛隊といえど、この僕にケンカを売ろうなんて、そんな度胸のある奴はそうそういないだろうけどさ(キリッ」 実は、親衛隊の人達が僕に直接的に手を下したりしてこないのは、もちろん別の理由があるからなのだ。 その理由を、このときの僕は全く知らなかった。 それは、あの時僕と一緒にいた彼女のおかげだということ。 あの出来事のあと、泣く子も黙る久住小春親衛隊からもすっかり一目置かれる存在となっていた彼女。 そう、熊井ちゃんの存在こそが、彼らのブレーキになっているのだった。 親衛隊の人達から僕を守ってくれているのが熊井ちゃんだなんて。 それを知るのは、この後ずっと時間が経ってからのことになるのだが、今の僕はそんなこと全く知る由も無いのだった。 「そうなんだー。でもあの人たち、私にはすっごく親切にしてくれるんだよ」 「そりゃそうだよ。小春ちゃんのことを絶対神だと思ってるような人たちなんだから」 「まぁ、仲良くね。みんなで楽しくやろうよ」 それは僕ではなく、是非彼らに言ってあげて下さい。 小春ちゃんの言うことなら素直に聞くだろうから。 「そんな感じでさ。応援団に親衛隊。この人達のせいで僕の学校生活は毎日緊張の連続なんだよ」 自分の学校の中でぐらい、リラックスして過ごさせて欲しいんだよ。 ただでさえ、毎日毎日緊張から開放されない日々を送ってるんだから。 それもこれも原因は全てあれだ。 あの日この学校に殴りこんで来た熊井ちゃん、あの人が全ての元凶なのだ。 熊井ちゃん、本当に頼むよ。 なんで彼女は他校である僕の学校でそんな原因をつくってくれるんだ。 そして、何でこの僕がその影響をモロ被りすることになるんだ。 僕がため息をついていると、小春ちゃんが突然思いもかけないことを言い出した。 「その人達以外にも、不安材料はまだあるでしょ?」 「え?」 「ついこの前、うちの生徒会にあの学園の風紀委員長さんから直々に呼び出しがあってねー」 学園の風紀委員長さんって、それってなかさきちゃんのことじゃないか。 呼び出し? なーんか嫌な予感がするぞ。 「それでね、わたしが学園に行って話しを聞いてきたんだけど、うちの学校の生徒が学園の生徒につきまとったりしてて、とても迷惑してるんだって」 「そ、そんなことする人がいるんだ・・・」 「それでね、そういう風紀を乱す行為をする生徒を厳罰に処して欲しいっていう苦情だったんだけどね」 ニコニコ顔の小春ちゃんが顔を近づけてきた。 これすごく嬉しいんだけど、いま僕は小春ちゃんの言ったことに動揺を隠せず、それどころでは無かった。 「あははー、やっぱり心当たりがあるんだ!」 「学園の風紀委員長さんに名指しで苦情を入れられるなんて、そんなの初めてだよ。あはははは」 「名指し・・・なかさきちゃんが僕のことを名指しで・・・・」 「なかさきちゃんって、なっきぃのこと? そうやって呼ぶんだ」 「でも、そんな名前で呼ぶほどの仲なのに、なんでそんな苦情が来るようなことになってるのー?」 「僕にもよく分からないんだけど、いつのまにか事態が泥沼化してしまってて・・・ 本当に何故なんだろう」 本当に、どうして僕の学校生活はこんな風になってしまったのだろう。 校内を歩けば、応援団やら親衛隊だのといった余り関わりたくないような人達が僕のことをジロジロ見てくるし。 そして、ついに他の学校から名指しで苦情を入れられるようにまでなってしまった。 高校に入ったばかりのころ、僕の毎日はこんなでは無かった。 もっと落ち着いた、平凡だが平和な毎日を送っている、そんなごく普通の高校生だったはずだ。 それが、どうしてこうなった・・・ 「色々な人達から目を付けられたりして、ホントに楽しそうだねー」 明るく笑う小春ちゃん。 僕にとって笑い事じゃないんだよ、本当に、もう。 楽しくなんか無いから、全然。 次へ TOP
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前へ 「どーぞ、汚い部屋ですが」 部屋に入るなり、ももは奥にあるふかふかビーズクッションにダイブした。 「いやーん、やっぱこれ気持ちいい~!ふわっふわで、羊さんみたぁい」 「・・・てか、うちらしかいなんだから、いちいちそっち系になりきらなくていいから」 「そっち?どっちかにゃ???」 ――もものやつ、大学生になったら落ち着くかと思ったら・・・。よっぽど、高校のときと違って、ちやほやしてくれる人がいないんだろうな。珍獣扱いというか。 「素敵なお部屋ね、ももちゃん」 一方、岡井さんはものめずらしそうに、私の魔女ルーム(弟は紫ババアの部屋と呼んでいる・・・)を見回している。 「でも、ちょー狭く感じるでしょ。岡・・ちさと、の部屋の半分もないんじゃない?」 「いいえ、そんなことはないわ。この水晶玉やステンドグラスのパーテーションも、とても綺麗。ね、ももちゃん」 ――ん?なんだろ、褒められてるのに、なにかが頭に引っかかる。・・・もっと言ったら、微妙にイラッと来る感じ。 そして、それは会話を重ねていくごとに増幅していくようだった。 「お菓子、全然高級品とかじゃないけど食べて?あのチョコのお菓子の新フレーバーで・・・」 「とても美味しいわ。ね、ももちゃんもそう思うでしょう?」 「・・・夏焼先輩の写真、見る?」 「ええ、ありがとう。ももちゃんも一緒に」 「ねー、ちょっとなんなのさっきから!!」 ついに、私の中の違和感が爆発し、ミニテーブルをバンと叩いて立ち上がった。 「ウフフ、やーだぁ、梨沙子ったら。何怒ってるのぉ?」 「あ、あの、あの、えと」 「だってさぁ!」 よっぽど引っかかっていたのか、こんなことで・・・と思うけれど、なぜか涙がにじんできた。 あー、もう。いったん感情的になると、すぐこれですよ。よくないってわかってるんだけど・・・。 「ほら、おいで梨沙子。千聖も。ウフフ、しょうがないなぁ」 「・・・うん」 こんな時は、ももの変わらない態度がとてもありがたい。 ももを真ん中に、3人して大きめのビーズクッションにすっぽりとお尻を落ち着けた。 「おっきいこえ、出してごめんね」 ひとしきりキーキー喚いてみると、なんだか心が落ち着いた。私はおか、ちさとにぺこりと頭を下げた。 「あ・・・そんな、私」 「それで、梨沙子は、何で怒ったのかな?」 ももがまるで、幼稚園の先生みたいな口調で問いかけてくる。そういえば、教職の勉強してるって言ってたっけ。 「だってさぁ・・・」 おk・・・千聖は少し涙目になって、私をじーっと見ている。俄かにそわそわと胸がざわめく。 魔女の宝石の瞳。いつもよりきらきらしていて、その力が、より増幅されているみたいだ。 私はあわてて言葉を紡いだ。 「だ、だって、全然私のこと呼んでくれないじゃん、梨沙子って!ももばっかり!うちに来たんでしょ!なんでももとかどうでもいいじゃんか!」 言い切ってから、まるで小学生のような自分の主張に、じわじわと恥ずかしさがこみ上げてくる。 だけど、言葉にしたことで、自分が思っていることが、正確に認識できたようにも思う。 そうか・・・私、寂しかったのかもしれない。 「だってだって・・・。名前で呼び合うって決めたのにさ、岡・・・千聖、話しかけたら逃げるようになっちゃったし。 てか、全然呼んでくれてないじゃん。今も、ももにばっか話しかけて」 「違うの、それは、すぎゃさ、あの・・・えっと・・・」 また岡井さんは、顔を赤くしてうつむいてしまった。 こういう事態になると、本当に思い知らされる。 私って、気を使われることはあっても、使うことがほとんどないんだな、と。現に、今どうしたらいいのか全くわからない。 「うっふっふっふー♪」 でも今日は、異様に察しのいいももが手を差し伸べてくれる。 「だからぁ、もぉわかっちゃった!千聖、もう“梨沙子”呼びやめたいんでしょー」 「ええっ!」 いや、それはさすがに・・・だって、あんなに梨沙子梨沙子梨沙子って手紙に書いてきたのに。これはももの読み違いというものだろう。 「・・・あの、じつは、ももちゃんの言うとおりで」 「あってるのかよ!」 本当、岡井・・・千聖って、何考えてるんだか。それを察してしまうももも大概おかしいけど、まったくついていけない。一般人の私では。 「どうして呼びたくなくなっちゃったの?」 「えと、それは・・・だって・・・」 岡井さん、ああもう!千聖は、近くにあったコウモリモチーフの人形を抱きしめると、上目づかいで私を見つめてきた。・・だから、そういう態度が有原さんと舞ちゃん(ry 「だって・・・」 「だって、なによ」 「・・・・・・・・・はずかしくて・・・」 言い切ると、岡井さんは完全にお人形に顔をうずめてしまって、もじもじと小さく身を捩り、ついには私に背中を向けてしまった。 「は、恥ずかしいってなにそれ。友達じゃん」 「でも、寮の皆さんはまた違うのだけれど、学校のお友達で、千聖にそんな、お名前を呼ばせてフガフガフガ」 「わかんないよぉ~」 すると、待ってましたとばかりにももがドヤ顔を見せ付けてきた。 「ウフフ、だからー、要はね?千聖は梨沙子とより仲良くなれたって思ってぇ、嬉しくなりすぎちゃってぇ、わけわかんなくなっちゃったんだよね?」 「・・・ええ」 「ええ!?意味わかんない!」 背中を向けたまま、ちらちらとこっちを見てくる岡井さ、千聖はまるで子犬みたいだ。・・・じゃっかんちょっとアホな子ね。 「で、梨沙子も」 「私?」 いきなり呼ばれて、反射的に背筋が伸びる。 「梨沙子、ぶっちゃけ、千聖のこと名前で呼ぶの疲れてきたんじゃない?」 「うっ・・・」 いきなり、核心をつかれた。 ももは岡、千聖とは違うタイプだけれど、やっぱりエスパーさんだから、ごまかしなんて通用しない。 私の考えている事を、いとも簡単に言い当ててしまった。 「千聖の存在が、うっとうしいものということなのかしら・・・」 「違うよ、なんでそう重く取るかな!そうじゃなくてあばばば」 あからさまにシュンとした顔をされて、この私があわあわとフォローに回ることとなってしまった。 「・・・別に、岡井さん、のままでよくない?もう、呼び方で関係が変わるほど、浅い仲じゃないじゃん、私たち」 「すぎゃさん・・・」 「そうそう!そのほうがいい!スギャとか意味わかんないけど、岡井さんは岡井さんで、私はすぎゃさんだよ。ねえ、もどそ?呼び方」 言い切って、なんだかすっきりした気分になった。のどにひっかかったラーメンの麺が、するりと抜けた感じ。 「・・・ええ、わかったわ」 岡井さんも、やっと笑顔でこっちを向いてくれた。 「梨沙子、って呼ばせてもらえて、嬉しかったけれど・・・ちゃんとすぎゃさんの目を見てお話できないのなら、あまり意味がないものね」 「うんうん、そうだよ!」 ほらみろほらみろ!熊井ちゃんめ、人の友情に変な口挟むから、どうでもいいことでこうやって・・・ 「それより梨沙子ぉ、もぉおなか減っちゃったよー」 「えー?しょうがないなぁ」 もものワガママきっかけで、ママにお願いしてラーメンを部屋に運んでもらう 「ウフフ」 「いひひひ」 もう、全然変な感じじゃない。以外と切り替えが早く、あっさりしている岡井さんだから、いつまでもうじうじと引きずらないところには助かる。 そして、あきらかに普段よりグレードの高いチャーシュー、コクのあるトンコツスープ、喉越しまろやかな生麺・・・。あきらかに、岡井さんに合わせた感満載。イヒヒ、今日はいろんな意味で、来てもらってよかった。とかいってw 「おいしい?」 「ええ。細麺ながら、噛みごたえのある麺、それから新鮮なおネギの食感がシャッキリポンと(ry」 どこぞの料理マンガみたいな斬新な感想を交えつつ、岡井さんがとても上品に、麺をするすると音を立てずに啜っていく。 ほんと、こんなちょっとのことでも、育ちの違いを感じるけれど、やっぱり私は彼女のことが好きなんだと思う。・・・それに、岡井さん、って呼び方、堅いかもしれないけど、結構気に入ってるんだから。 「おかわりいっちゃう?」 「まあ・・・それでは、お言葉に甘えて。ウフフ」 「えー?もぉおなかいっぱいなんだけどー!よく食べるなぁ」 早々リタイア状態のももをおいてけぼりに、私と岡井さんはその後も、替え玉3玉ずつ、ラーメンを堪能したのだった。 ムチムチ リ ・一・ リ テカテカ<ただいま♪今日のお夕食は何かしら? (o・ⅴ・)<・・・ (o・ⅴ・)<寒天!寒天!寒天!!! リ ・一・# リ<キーッ!!! 次へ TOP